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1.後見業務を失って

実は今回の無責任な報道により被害を受けたのは、私個人にとどまりません。 私のクライアントが、私のサービスを受けられない状況に陥ってしまったのです。


行政書士会では、「一般社団法人コスモス成年後見サポートセンター」という団体を運営しており、成年後見に関する研修を受けた行政書士を会員として、成年後見業務を推進しています。 私もその会員として、主に川口市からの依頼を受け、何件もの成年後見人を務めてきました。 通常、成年後見人を付けるには、親族が裁判所に申立をすることが多いのですが、身寄りのない方や、親族がいても遠隔地に住んでいたり疎遠であったりなどで、申立をする人がいない場合は、市長の名前で申立をしてもらうことが可能です。 その場合、市では、弁護士や司法書士、行政書士などから、本人の事情を考慮し、適当と思われる士業者などに後見人になるよう打診してきます。


後見人の報酬は、裁判所が種々の事情に鑑みて決定しますが、市長が申立をするケースは、元々親族と疎遠になるくらいですから、資力の乏しい方が主になります。 一部、市の助成がありますが、満額ではありません。 従って、裁判所が決定する報酬も抑えられたものになります。 ある例では、本人に代わって裁判を起こし、不動産の相続登記をし、買い手のつかない不動産の売却を進めたことについて、報酬が7万円と定められた事案もありました。 弁護士や司法書士に頼めばゼロが一つ足りないくらいで、普通はとても割が合わないと考えるでしょう。


一方で、後見人はご本人の人生を丸ごと預かるようなものですから、責任は重大です。 事務量も相応のものになりますから、商売として考えればうまみのあるものではありません。 とはいえ、完璧を目指さなくてもご本人から苦情が出ることはまずありませんし、苦情を言う親族もいませんから、手を抜こうとすれば多少は抜くこともできます。 しかしそれでは仕事として面白味がありません。 常にベストの選択を目指し、特に、他の者が後見人であったらこうはできなかった(しなかった)であろうと思われる事案があると、まさに後見人冥利に尽きると感じることができます。


ところが、今回の事件報道を受けて、さいたま家庭裁判所の書記官から、後見人を辞任するよう強要されました。 裁判所が選任しているので、外部から批判されたら都合が悪いというのです。 私が事情を説明して続けたいと言っても、コスモスや川口市にも迷惑がかかることになるなどと強迫し、辞任の已む無きに追い込まれました。 解任すれば済むものを、解任では裁判所が批判される可能性もあり、また解任するほどの事情ではなかったので、辞任を強要したのです。


後見人を必要とする方々は、なかなか心を開いてくれないことも多く、何しろ財産を全て預かるのですから、根気強く接していかないとなりません。 ようやくご本人と親しくなれ、周囲の介護・病院関係者やご近所さんからも信頼されてきたところで後見人が交代するというのは、周囲の方々にも意外であったようで、非常に残念がられました。 あるケアマネージャーさんからは、「他の利用者の後見人はフットワークがよくない。鈴木さんみたいな方はいない。」とおっしゃっていただきました。 正に最高の褒め言葉です。 こうなったのは、裁判所が後見人の実績を考慮せず、ご本人の福祉よりも、体裁を重視したからに他なりません。


既に手持ちの案件は全て辞任し、後任の方に引継ぎを済ませました。 もちろん、それぞれ後見業務のエキスパートではありますが、人と人のつながりですから、正直、心配が無くなることはないでしょう。


余談ですが、私が裁判所に辞任の申立をした後、2か月間で2人の方がお亡くなりになりました。 また、過去1~2年間、病院とは無縁だった方が急に入院されました。 私の辞任とは直接関係無いのでしょうが、何かが伝わったような気がしてなりません。合掌。


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