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3.後見業務ファイル(3)

別の例を紹介します。 こちらは比較的資力のある男性です。 やはり親族は疎遠で誰も面倒を見る人はいません。 自宅に1人暮らしで、悪質な訪問販売やらが出入りして、カモにされていそうな感じでした。


市が後見申立に動き始めたところ、将来相続人になりそうな親族が、後見人に余計な金を払って相続財産が減っては困ると思ったのでしょう。 急に出てきて本人に接触したりいろいろ口をはさんだりしたようですが、放っておいては本人のためにはなりません。 市がそのまま後見申立を進めたのは立派でした。


本人は公共料金の支払いなどにカードを利用していましたが、あるとき、JRの駅での回数券の大量購入など、明らかな不正利用がありました。 額は60万円超で、そのときは口座の残高不足でしたが、支払っても過度に負担になる額ではありません。


私が後見人についたときにはカードの盗難保険の適用期間を経過していましたが、カード会社に本人の実情を伝え、社内で処理をするよう依頼しました。


するとカード会社は、1年ほど前にも同じ手口での不正利用があり、そのときは保険適用してカード再発行をしたが、今回は本人または近親者の行為と思われ、保険適用不可という回答でした。 カードの管理義務違反ということです。


なるほどカード会社の主張にも一理あります。 B級の後見人なら、面倒くさいし、払えない額でもないし、本人も周囲も何も言わないし(例の親族に報告する義務はありません)、ここであきらめて支払いをしてしまうかもしれません。


しかし私は過去にカード会社に勤務し、与信管理や不正利用の部門にも関係していたので、あっさり引き下がることはできません。 前回の保険適用の際、カード会社は本人の状況を調べたはずです。そうでないにしても、調べるべきでした。 それにより、本人は高齢の一人暮らしで、他の利用は公共料金などの登録型加盟店のみであることは承知していたはずです。 また、再発行したカードは本人から未受領の申出があり、再々発行したとのことでしたが、書留郵便で配達されているので、本人にカード管理能力が欠けていることもわかります。 であれば、利用限度額を下げるなどの対応もすべきでした。


カードの管理義務は善管注意義務ですから、本人の経験や能力により、求められる注意の程度は異なります。 カード会社に後見申立時の事情説明書や診断書を示し、請求放棄とするよう再度依頼しました。 その後、カード会社から保険適用とする旨の回答を得て、本件は解決しました。


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